2024/03/07
犬の「目頭側に赤い粘膜の膨らみがある」「目やにが出ている」「左右で目の形が違う」などの異常が現れていませんか?このような症状のときには、チェリーアイが疑われます。
チェリーアイとは、目頭にある瞬膜腺(第三瞬膜腺)が飛び出し、外側から見えてしまう病気です。チェリーアイの正式名称は「瞬膜腺(第三眼瞼腺)脱出」といいますが、飛び出した瞬膜腺(第三眼瞼腺)が腫れてさくらんぼ (チェリー)のように見えるため、このように呼ばれるようになりました。
瞬膜(第三眼瞼)は下まぶたの内側にある、人間にはない3つ目のまぶたです。
知らない方も多いですが、犬や猫には上まぶたと下まぶたの他に3つ目のまぶたがあります。瞬膜(第三眼瞼)は、ゴミが目に入らないようにする役割を担っています。瞬膜(第三眼瞼)の根元にある瞬膜腺(第三眼瞼腺)は、涙を分泌して眼球を乾燥から保護します。普段は目頭の奥に収まっているため見えることはありませんが、瞬膜(第三眼瞼)の根元の付け根が何らかの原因でゆるむことで瞬膜腺(第三眼瞼腺)が飛び出してしまいます。
また、チェリーアイのほとんどは1歳未満の子犬で発症します。
今回は犬のチェリーアイについて、考えられる原因や治療方法についてご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
残念ながら、チェリーアイの正確な原因は分かっていません。考えられる原因としては、瞬膜腺(第三眼瞼腺)と眼球を結ぶ組織の付着が弱いことが挙げられます。通常、瞬膜腺(第三眼瞼腺)は眼球周囲の組織にしっかりとくっついていますが、チェリーアイの犬はこの接着が弱いため、多少の眼球の動きでひっくり返って瞬膜(第三眼瞼)が外側に出てしまうと考えられます。
1歳未満の子犬で発生が多い理由としては、成長過程である子犬の時期は眼球と瞬膜腺(第三眼瞼腺)の大きさのバランスが取れていないことや、瞬膜腺(第三眼瞼腺)と眼窩骨を結ぶ組織の付着が遺伝的に弱いためと考えられています。
また、ビーグルやコッカー・スパニエル、ペキニーズ、フレンチ・ブルドッグ、イングリッシュ・ブルドッグ・ペキニーズ・チワワなどはチェリーアイの好発犬種が発症しやすいです。
症状
チェリーアイはその特徴的な見た目から、飼い主様自身が目の異変に気付き来院されることが多いです。
チェリーアイの主な初期症状は以下の通りです。
・目頭側からチェリーのように赤く腫れた塊が飛び出す
・犬が目を気にして、前足で掻くような仕草が増える
・目やにや涙の量が増える
・白目が赤く充血する
飛び出した瞬膜腺(第三眼瞼腺)はやがて炎症を起こし、痛みやかゆみを感じるため犬は目を前足で掻いたり、物に擦り付けたりしてしまいます。それによりさらに瞬膜(第三眼瞼)は飛び出し、角膜について傷から二次的に細菌が感染し、角膜炎などが発生します。
さらに症状が進行すると、乾燥や炎症によりダメージを受けた瞬膜腺(第三眼瞼腺)で涙が作れなくなり、涙の量が減少することでドライアイになってしまいます。ドライアイになると角膜が傷つきやすく、角膜炎がさらに悪化してしまうため痛みや不快感が強くなります。同時に第三眼瞼に存在する軟骨の変形も進行するため、手術をしても簡単に元に戻せなくなってしまいます。
診断方法
チェリーアイは特徴的な見た目なので、特別な機械を用いた検査などをしなくても視診によって診断することができます。目をよく観察し、第三眼瞼が飛び出ていることや第三眼瞼の腫れなどを確認します。また、角膜に傷がついていないかを調べるための染色検査や、ドライアイを調べるための涙液量を測る検査を実施することがあります。
一方で、チェリーアイによく似た病気として眼球周囲組織の腫瘍(扁平上皮癌、リンパ腫、線維肉腫など)や、第三眼瞼腺の腫瘍(腺腫、腺癌)などがあります。1歳を超えてチェリーアイに似た症状が現れた場合はこれら腫瘍の可能性が高まるため、細胞の一部を採取して検査を行い、手術で摘出した組織を病理組織学的検査に回す場合があります。
治療方法
瞬膜腺(第三眼瞼腺)の突出が軽度である場合は、目の乾燥を防ぐヒアルロン酸や炎症を抑えるための抗炎症薬を点眼して様子を見ます。突出を何度も繰り返す、チェリーアイから角膜炎に進行している、飼い主様が審美的に気にされる場合などは、外科手術で突出した第三眼瞼を元の正常な位置に整復して縫い合わせることも可能です。
また、点眼や手術に合わせて眼球に刺激を与えないようにエリザベスカラーを着用し目をこすらせないようにします。
予防法やご家庭での注意点
チェリーアイの明確な予防方法はありません。
発症してから時間がたったチェリーアイは、結膜炎や角膜炎、瞬膜腺(第三眼瞼腺)の軟骨変性などを引き起こす可能性があります。そのため、早期に治療を行うことが非常に重要です。
日頃から愛犬の目を定期的にチェックし、チェリーアイを早期発見、早期治療が行えるように心がけましょう。
まとめ
チェリーアイは直接的に命に関わる病気ではありませんが、チェリーアイを放置すると角膜炎、瞬膜腺の軟骨の変性を引き起こし、治すことが難しくなるため、症状が見られたら早めに治療を開始することが大切です。
日頃から愛犬の様子や目の状態を観察し、異変を感じたら獣医師に相談しましょう。
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