2025/02/04
最近、愛犬や愛猫の「元気がない」「食欲が落ちてきた」と感じることはありませんか?それは、肝臓に何らかの問題が起きているサインかもしれません。肝臓は「体の化学工場」と呼ばれるほど多くの重要な働きを担っている臓器ですが、病気が進行しても症状が出にくいため「沈黙の臓器」とも言われます。
肝臓が病気になると、中毒性の症状や慢性の問題が引き起こされ、犬や猫にとって重大な健康リスクとなる場合があります。
今回は犬や猫の肝臓病について、症状や代表的な疾患、治療方法などを解説します。
■目次
1.肝臓の主な役割
2.症状
3.代表的な肝臓病
4.診断方法
5.治療方法
6.予防と日常のケア
7.まとめ
肝臓の主な役割
肝臓は犬や猫の健康に欠かせない重要な臓器です。その主な役割は以下の3つに分けられます。
<栄養の貯蔵と代謝>
食べ物から摂取した栄養を体が吸収できる形に変え、エネルギーとして利用できるように調整します。
<解毒>
体内に入った有害物質を分解し、無毒化します。これにより体全体を守る役割を果たします。
<胆汁の合成と分泌>
脂肪を消化するために必要な胆汁を作り、胆嚢(たんのう)に貯蔵します。この胆汁が正常に働かないと、消化不良や他の病気を引き起こします。
肝臓がこれらの役割を果たせなくなると、犬や猫の体にさまざまな異常が現れます。
症状
<初期症状と要注意サイン>
肝臓病の初期症状は非常にわかりにくいですが、最も多いのが食欲不振です。日常的に食事量や行動に注意し、「最近食欲が落ちたな」と感じた場合は、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。
その他の初期症状には、以下のようなものが挙げられます。
・嘔吐や下痢
・元気がなくなる
・毛艶の低下
これらの変化が見られた場合、肝臓に異常が起きている可能性があります。
<重症化した際の症状>
肝臓病が進行すると、より深刻な症状が現れます。例えば、黄疸(粘膜や皮膚が黄色くなる状態)や体重減少などが典型的です。また、腹部が異常に膨らんでいる場合は、腹水が溜まっている可能性があります。
さらに、重篤化すると神経症状が現れることもあります。具体的には、ふるえや精神的な異常行動が見られることがあります。このような場合、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
<犬と猫での症状の違い>
犬と猫では、肝臓病の症状や原因が異なる場合があります。例えば、犬では中毒性の肝障害や先天的な異常が多く見られる一方、猫では肥満や食事の問題による肝疾患が多いのが特徴です。それぞれの特徴を踏まえた注意が必要です。
代表的な肝臓病
■犬の場合
<肝炎(急性・慢性)>
急性肝炎はウイルスや細菌の感染、あるいは化学物質などが原因となることが多いです。一方で、慢性肝炎は急性肝炎から進行する場合や原因不明のことが多く、進行すると肝硬変や肝臓がんへ移行する恐れがあります。
<先天性門脈体循環シャント>
門脈シャントは肝臓を経由しない血管の異常によって毒素が全身に回る病気です。発育不良やふらつき、食後の異常行動が特徴的です。
<中毒性肝障害>
重金属や薬物、毒性のある植物などによって引き起こされます。急激に症状が悪化するため、早急な診察が必要です。
■猫の場合
<胆管肝炎>
細菌感染が原因となり、嘔吐、黄疸、尿の色が濃くなる(山吹色)などの症状が見られます。特にオス猫に多いとされています。
<甲状腺機能亢進症>
甲状腺ホルモンの過剰分泌による代謝異常が原因で、肝臓にも影響を及ぼすことがあります。この場合、血液検査で肝酵素の上昇が見られることが一般的です。
<肝リピドーシス>
肥満の猫で発症することが多く、肝臓に脂肪が過剰に蓄積される病気です。食欲不振が1週間以上続く場合は、特に注意が必要です。
診断方法
肝臓病の診断では、主に血液検査が用いられます。肝臓に異常がある場合、ALTやASTといった酵素の値が上昇するのが特徴です。また、黄疸が認められる場合は、血液中のビリルビン値の上昇が確認されることが一般的です。
さらに、必要に応じて超音波検査やCT検査などの画像診断が行われ、肝臓や胆嚢の状態を詳しく確認します。
治療方法
肝臓病の治療は、原因に応じて異なります。中毒性の肝炎の場合は毒物を排除し、対症療法として点滴や投薬が行われます。また、門脈シャントや胆嚢粘液嚢腫のような場合は、外科手術が必要となることもあります。
特に胆嚢が破裂するリスクがある場合、早急な手術が推奨されます。
予防と日常のケア
肝臓病を予防するためには、定期的な健康診断が不可欠です。また、犬や猫に適切な体重管理を行うことも重要です。肥満は肝臓への負担を増加させるため、日々の食事や運動にも注意を払いましょう。
また、犬や猫にとって有害な食べ物や植物を家の中から排除し、安全な環境を整えることも予防策の一つです。
まとめ
肝臓は犬や猫の健康を支える重要な臓器です。定期的な健康診断と日常のケアで早期発見を心がけ、肝臓病のリスクを最小限に抑えましょう。
また、犬や猫の小さな変化を見逃さないようにし、もし異常を感じた場合は、早めに動物病院を訪れることが愛犬や愛猫の健康を守る第一歩です。
埼玉県川口市・さいたま市(浦和区)・越谷市を中心に診療を行う
森田動物医療センター
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