2023/03/13
犬の急性腎不全は、出血や中毒、感染症、尿路の閉塞などの原因によって腎機能が急激に低下してしまう状態のことを言います。
初期症状では急な元気の消失や食欲不振、嘔吐や下痢などが見られ、症状が悪化すると命にもかかわるため、早期の発見と治療が重要です。
今回は、犬の急性腎不全の症状や原因、治療法などについて解説していきます。
急性腎不全の症状
犬の急性腎不全では、初期の頃には以下のような症状が見られます。
・急激な元気の消失
・食欲不振
・頻回の嘔吐
・下痢
・脱水
また、症状が悪化すると尿量の減少や排尿がなくなり、体内に老廃物がたまって尿毒症という状態になります。
尿毒症になると、口内炎、口臭の悪化や、痙攣、呼吸困難などが起こります。
気になる症状が見られる場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
急性腎不全の原因
犬の急性腎不全を引き起こす原因には以下の要因が考えられます。
①腎臓への血流が低下して起こるもの(腎前性)
血流の低下が起こる原因としては、外傷や手術などによる出血、脱水、深麻酔、心疾患などがあります。
②腎臓自体の障害によるもの(腎性)
腎臓自体の障害による原因としては、細菌やレプトスピラなどの感染、腎毒性のある食物や薬剤、重金属などによる中毒、腎炎、免疫疾患などがあります。
③尿の排泄ができなくなることによるもの(腎後性)
尿の排泄ができなくなる原因としては、尿石症、腫瘍などがあります。
急性腎不全の診断
急性腎不全の診断方法は、以下の方法があります。
・血液検査
主に腎臓の数値や、カリウム、リンなどの数値を確認します。
・尿検査
尿比重や尿蛋白、尿糖などを確認します。
・画像検査
超音波検査やレントゲン検査で、腎臓の構造や大きさ、血液の流れに異常がないか、結石がないかなどを確認します。
急性腎不全の治療法
急性腎不全は早急に治療を行わないと命にかかわるため、基本的には入院して治療を行います。
急性腎不全に対する治療には、輸液による保存療法と透析治療があります。
・保存療法
適切な輸液療法によって、脱水の補正、電解質や㏗の調整、毒素や老廃物の排出の促進などを行い、傷害を受けた尿細管が再生するのを待ちます。
・透析治療
重症である場合や、輸液を行っても効果があまり見られない場合には、血液透析や腹膜透析による治療が選択されることもあります。
ただしこの方法は特殊な設備が必要となるため、行うことのできる病院は限られています。
迅速に適切な治療を行えば、腎機能が回復する可能性もありますが、万が一腎機能が回復しなかった場合は慢性腎臓病に移行します。
そのため、たとえ元気になってもその後の経過を追うことが重要です。
■慢性腎臓病についてはこちらの記事で解説しています
飼い主さんが気を付けるべき点
犬にとって腎毒性のあるブドウやレーズンなどの誤食やユリなどの植物の誤食、アセトアミノフェンなどの薬物や除草剤、重金属などを誤って摂取しないように十分気を付けることが重要です。
また急性腎不全を引き起こす感染症であるレプトスピラ症は、ワクチン接種で予防することが可能です。
正しい知識を持って愛犬の健康を守り、急性腎不全を予防しましょう。
まとめ
犬の急性腎不全は、様々な原因によって急激に腎機能が低下し、あっという間に症状が進み命を落としてしまうこともあります。
治療の開始時期が予後を左右するので、早期発見・治療が重要です。
また、犬種や年齢に関係なく急性腎不全になる可能性があるため、日ごろから愛犬の様子のチェックを行い、原因となるものを誤食してしまう場合や、愛犬の様子がいつもと違う場合には早急に動物病院を受診しましょう。
お困りごとがあればお気軽に当院にご相談ください。
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森田動物医療センター
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