2023/06/22
歯周病が悪化すると歯がグラグラと動揺したり、根尖膿瘍や下顎骨の骨折が起きたりします。
根尖膿瘍とは、歯の根(根尖部)に膿の袋(膿瘍)ができる中高齢の犬や猫に多く認められる病気のことです。ここでは、根尖膿瘍について解説します。
■目次
1.根尖膿瘍の原因
2.根尖膿瘍の症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ
根尖膿瘍の原因
犬や猫の根尖膿瘍の原因で一番多いのは、歯周病の悪化によるものです。
歯周病では、歯垢の中の細菌が原因となり歯肉が腫れたり(歯肉炎)、歯を支えている歯周組織が破壊(歯周炎)されたりします。
さらに、歯石などが付着し、歯周病が悪化すると歯槽骨(歯を支えている骨)がどんどん溶けてしまうのです。
歯石中には大量の細菌が存在しており、炎症部位の粘膜から血管にその細菌が入り込み、血液を介して根尖部に細菌感染が広がり、歯槽骨が溶け、膿瘍が形成されたものが根尖膿瘍です。
また、歯が折れたり、歯がこすれたりすることで歯髄(歯の中心部)が露出し、歯髄の細菌感染が根尖部に広がり、膿瘍が形成される場合もあります。
歯周病の詳しい内容についてはこちらの記事で解説しています
根尖膿瘍の症状
根尖膿瘍は歯の根の部分で起こっているため、進行するまで気付かず、口臭やよだれ、噛みかたの異常(片方の顎で噛もうとする仕草)、食欲不振などの症状が初期ではみられます。
根尖膿瘍の好発部位である目の下付近の上顎第四前臼歯では、進行すると顔の腫れがみられます。腫れは軽度のこともありますが、大きく膨らんだり、膿瘍部分の頬の皮膚が破けて、皮膚から腐敗臭を伴う膿が排出されたりします。
犬の骨標本
当院を受診した根尖膿瘍の症例
診断方法
まず、患部の症状を観察し、歯や口の周りの腫れ・炎症、口臭や悪臭、食欲不振、歯ぐきからの膿や血の排出がないか確認します。
原因が歯石の付着による炎症や歯茎の炎症など詳細な検査が必要になるような場合には、鎮静をかけた上で口腔内のレントゲンを撮影し治療方針を決めていきます。
(※当院では麻酔下での歯科治療の際同時に行うことが多いです。)
さらに、状況に応じて追加の検査が行われることもあり例えば、歯根の詳細な評価のために歯髄採取や根管治療が行われることがあります。
治療方法
根尖膿瘍の根本治療は、麻酔下で原因となる歯の抜歯など歯科処置を行うことです。
さらに、そのまま1回の麻酔下で歯石除去も同時に実施します。
ただ、麻酔をかけることができないなど状況にあわせて、抗生物質や消炎剤の内服などを投与する内科治療を選択する場合もあります。
しかし、内科治療は感染や腫脹を改善させるためで、根本的な治療ではないため、一時的で再発する可能性があります。
予防や飼い主さんが気を付けるべき点
中高齢になった時に歯周病にならないよう、子犬や子猫の頃から歯を磨く習慣をつけることが予防につながります。
中高齢になって歯石が蓄積した場合には、必要に応じ歯石の除去などを行いましょう。
また、歯の破折を防ぐために、硬い玩具やおやつを与えないことも予防の一つです。
犬と猫の歯についての詳しい内容はこちらの記事で解説しています
犬と猫の正しい歯のケア方法についての詳しい内容はこちらの記事で解説しています
まとめ
今回は、根尖膿瘍について解説しました。
お家で歯を磨くのはもちろんのこと、歯石が付着していないか、歯肉炎や歯周炎は大丈夫かを獣医師に定期的にチェックしてもらうことも大切です。
埼玉県川口市・さいたま市(浦和区)・越谷市を中心に診療を行う
森田動物医療センター
TEL:048-281-3166