2025/03/17
愛犬や愛猫の目の周りが赤く腫れていたり、痒そうにしていたりするのを見たことはありませんか? 目の異常は放っておくと視力の低下や失明につながることもあるため、早期発見・早期治療がとても重要です。
特に「目の周りをしきりに掻く」「涙が増えた」「まぶたが腫れている」といった症状が見られる場合、眼瞼炎(がんけんえん)の可能性があります。眼瞼炎は犬や猫の目の病気の中でも比較的多く見られる疾患で、原因や治療法もさまざまです。
今回は犬や猫の眼瞼炎について、症状の見分け方や原因、治療方法、さらには季節ごとの注意点やご家庭でできるケアまで詳しく解説します。
■目次
1.緊急度チェック!こんな症状はありませんか?
2.眼瞼炎とは?
3.症状の見分け方
4.眼瞼炎の原因
5.診断方法
6.治療方法
7.季節別の注意点
8.ご家庭でできるケア
9.まとめ
緊急度チェック!こんな症状はありませんか?
犬や猫の眼瞼炎は、軽症のうちに治療すれば比較的早く治りますが、悪化すると視力に影響を及ぼす可能性もあります。以下のような症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
<症状チェックリスト>
・ まぶたが赤く腫れている
・ 目を頻繁にこする・引っかく
・ 涙が多く出る
・ 目やにが増えている(黄色や緑色の膿状の目やに)
・ まぶたの毛が抜けている
・ 目をしょぼしょぼさせている
<緊急性の判断基準>
・軽度:軽い赤みや腫れ、少量の目やにが見られ、数日様子を見ても問題ないことがほとんどです。
・中程度:痒みが強く、目をこすり続ける、涙の増加などが見られます。このような場合、早めの受診を推奨します。
・重度:まぶたが大きく腫れる、膿状の目やに、痛がる様子がある場合は、至急受診が必要です。
特に「目の痛みを感じている様子がある」「片目だけ異常がある」「目の色が変わった」といった場合は、緊急性が高いためすぐに動物病院を受診しましょう。
眼瞼炎とは?
眼瞼炎とは、まぶた(眼瞼)が炎症を起こし、赤く腫れたり痒みを伴ったりする病気です。進行するとまぶたの毛が抜けて黒ずんだり、目を頻繁にこすることで傷ができたりすることもあります。
【発症しやすい犬種】
眼瞼炎はどの犬や猫にも起こる可能性がありますが、特に以下の犬種や猫種では発症リスクが高いとされています。
<犬の場合>
・短頭種(シーズー、パグ、フレンチブルドッグなど):皮膚が折り重なっており、炎症を起こしやすいです。
・目の大きな小型犬(チワワ、ポメラニアンなど):目が大きく、刺激を受けやすいです。
<猫の場合>
・ペルシャ、エキゾチックショートヘア:鼻が低く、涙の流れが悪いため炎症が起こりやすいです。
症状の見分け方
健康な犬や猫の目は白目の部分が白く、目やにもほとんどありません。まぶたの皮膚もなめらかで、赤みがないのが普通です。
一方で、眼瞼炎の目は赤く腫れる、目やにや涙が増える、痒みを伴うことが多くなります。
<眼瞼炎の進行段階>
・初期:まぶたがわずかに赤くなり、目をこするしぐさが見られます。
・中期:腫れが目立ち、目やにや涙の量が増えます。
・重度:まぶたの毛が抜ける、色素沈着が起こる、角膜炎を併発することもあります。
<間違えやすい症状との違い>
眼瞼炎は他の目の病気と症状が似ているため、正しく見分けることが重要です。以下の表で、眼瞼炎と間違えやすい疾患の違いを確認しましょう。
このように、眼瞼炎は他の目の疾患と症状が似ているため、自己判断は禁物です。愛犬や愛猫の目の異常に気づいたら、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
眼瞼炎の原因
眼瞼炎の原因はさまざまで、主に以下の3つに分類されます。
<感染性の原因>
・細菌感染(ブドウ球菌など)
・真菌感染(カビの一種)
・寄生虫(特に毛包虫)
<アレルギー性の原因>
・食物アレルギー
・ハウスダストや花粉アレルギー
・アトピー性皮膚炎
<その他の要因>
・外傷(擦り傷や噛み傷)
・免疫異常(天疱瘡やぶどう膜皮膚症候群)
診断方法
犬や猫の眼瞼炎を診断するには、症状の観察だけでなく、以下の検査が必要です。
①視診(目の観察)
目の腫れや赤み、目やにの状態を確認し、結膜炎や角膜炎などの病気が関与していないかを調べます。
②皮膚検査(感染症の有無を確認)
まぶたの皮膚を採取し、細菌や真菌、寄生虫(毛包虫など)の感染がないかを顕微鏡で検査します。
③アレルギー検査
血液検査や除去食試験を行い、食物や環境アレルギーが関係していないかを確認します。
④血液検査(内分泌疾患の有無を確認)
甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が原因で皮膚症状が出ていないかを調べます。
診断には複数の検査が必要なこともあり、原因を正しく特定することで適切な治療につながります。
犬の甲状腺機能低下症についてはこちらから
犬や猫の血液検査、尿検査、糞便検査についてはこちらから
治療方法
眼瞼炎の治療方法は、以下のような原因に応じて異なります。
<感染症が原因の場合(細菌・真菌・寄生虫)>
・抗生剤や抗真菌薬の投与:細菌や真菌の感染がある場合、内服薬や点眼薬で治療します。
・駆虫薬の使用:毛包虫が原因の場合、駆虫薬を投与します。
<アレルギーが原因の場合>
・抗アレルギー薬やステロイドの投与:症状を抑えるために使用しますが、長期の使用には注意が必要です。
・アレルゲンの除去:食物アレルギーの場合は除去食を与え、環境アレルギーでは掃除や空気清浄機の活用が有効です。
<外傷や異物が原因の場合>
・抗炎症剤の点眼:軽度の炎症を抑えます。
・エリザベスカラーの装着:掻きむしりを防ぎ、悪化を防ぎます。
・異物の除去:目に異物が入っている場合、獣医師が適切に処置します。
<免疫異常が原因の場合>
・免疫抑制剤の投与:天疱瘡やぶどう膜皮膚症候群などの免疫疾患には、ステロイドや免疫抑制剤を使用します。
<その他の治療方法>
・温罨法(おんあんぽう):マイボーム腺機能不全が原因の場合、温めたタオルで目の周りを温めて油分の分泌を促します。
・栄養管理の見直し:皮膚の健康を維持するため、オメガ3脂肪酸やビタミンEを含むフードを取り入れることも有効です。
眼瞼炎は原因に応じた治療を行えば改善することが多いですが、慢性化することもあります。症状が軽いうちに適切な治療を受けることで、悪化を防ぐことができます。異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
季節別の注意点
犬や猫の眼瞼炎は、季節によって悪化しやすい要因が異なります。適切な対策を行い、症状の予防や悪化を防ぎましょう。
<春(花粉対策)>
春は花粉が多く、アレルギーによる眼瞼炎が増えます。散歩後に目の周りを拭き、室内の花粉対策を徹底しましょう。
<夏(虫刺され予防)>
夏はダニや蚊の影響で、感染症による眼瞼炎が起こりやすくなります。虫よけ対策を行い、草むらを避けて散歩しましょう。
<秋(アレルギー対策)>
秋はブタクサやヨモギの花粉が原因で、アレルギー性眼瞼炎が増える時期です。花粉が付きやすい場所を避け、バランスの良い食事で免疫を整えましょう。
<冬(乾燥対策)>
冬は乾燥で目のバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなります。加湿器を活用し、皮膚の健康を維持するフードを取り入れましょう。
ご家庭でできるケア
日々のケアを行うことで、眼瞼炎の予防や早期発見につながります。
<毎日のケアポイント>
・目の周りを清潔に保つ:濡れたガーゼで優しく拭き取りましょう。
・異常がないかチェックする:赤みや目やにが増えていないか毎日確認しましょう。
<異常を見つけた時の対応>
・軽度の症状(少しの赤みや腫れ):数日間様子を見てもOKですが、悪化する場合は受診しましょう。
・重度の症状(ひどい腫れや痛み、膿状の目やに):すぐに動物病院を受診しましょう。
<おすすめのケア用品>
・目の洗浄液:目の汚れを洗い流し、清潔を保ちます。
・犬や猫用ウェットティッシュ:外出後の汚れや花粉を拭き取るのに便利です。
・エリザベスカラー:目を掻くのを防ぎ、症状の悪化を抑えます。
まとめ
犬や猫の眼瞼炎は放置すると悪化し、視力に影響を及ぼす可能性があります。軽症のうちに適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。愛犬や愛猫の目に異変を感じたら、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
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