2024/04/09
目には「水晶体」と呼ばれるカメラのレンズのような器官があり、水晶体の厚みを変えることで物を見る際にピントを合わせることができるようになっています。
犬の目の病気の中には、この水晶体が本来の位置からずれてしまう「水晶体脱臼」という病気があり、脱臼が起こると目の炎症や緑内障などの他の眼疾患を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
今回は犬の水晶体脱臼について、考えられる原因や治療方法についてご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
通常、水晶体は「チン小帯」と呼ばれる繊維組織によって支えられていますが、チン小帯が緩んだり断裂してしまうことで水晶体を支えられなくなると、水晶体脱臼が起こります。
水晶体脱臼の原因となるチン小帯の緩みや断裂は、テリア種やミニチュア・シュナウザー、プードルなどの犬種で遺伝的(原発性)に見られることが多くありますが、他の犬種でも眼球打撲などの外傷や、白内障、緑内障、ぶどう膜炎、眼球の腫瘍など他の眼疾患が原因となり、続発的に発生することがあります。
症状
水晶体脱臼には、水晶体が前側にずれてしまう「前方脱臼」と後ろ側にずれてしまう「後方脱臼」があり、一般的に症状の重症度が異なります。
前方脱臼では目に激しい痛みが生じ、角膜浮腫や緑内障を引き起こすこともあります。
後方脱臼では前方脱臼に比べて症状は軽度な場合が多いですが、網膜剥離や眼内出血が起こることがあります。
愛犬に目を気にする様子や、目を細める、目の充血がある、目が白く濁るなどの症状が見られた場合には、早急に動物病院を受診してください。
診断方法
水晶体脱臼は、次のような検査を行い総合的に診断します。
・スリットランプ検査
目に細長い光を当てて、水晶体の位置や眼球内の構造を観察します。
・眼圧検査
眼圧計を使って眼圧を測定します。
・目の超音波検査
目に超音波を当てて、眼球内の状態を観察します。
治療方法
水晶体の前方脱臼の場合には、角膜浮腫や緑内障などが続発する可能性があるため、基本的には手術によって水晶体の摘出を行います。
後方脱臼の場合には、一般的には外科手術は行わずに経過観察となる事が多いですが、水晶体が前方に移動してしまうことを防ぐために縮瞳作用のある点眼薬を使うことがあります。
また、痛みがある場合には鎮痛剤を使用して痛みのコントロールをしたり、他の眼疾患がある場合にはそれに対する治療を並行したりして行います。
予防法やご家庭での注意点
水晶体脱臼を確実に予防する方法は残念ながらありませんが、早期の発見と治療によって緑内障などの続発する疾患を予防することが可能です。
特に水晶体脱臼の好発犬種である場合や、白内障や緑内障、ぶどう膜炎などの眼疾患がある場合には、普段から愛犬の目の様子をよく観察し、また定期的に動物病院でチェックをしてもらうようにしましょう。
まとめ
水晶体脱臼は、水晶体が前側に脱臼するか後ろ側に脱臼するかで症状や治療方法が異なりますが、どちらにしても発見や治療が遅れてしまうと他の眼疾患を引き起こす可能性があります。
早期発見・早期治療のためにも、日頃から愛犬の様子や目のチェックを行うようにし、何か気になることがあれば早めに動物病院を受診することが大切です。
埼玉県川口市・さいたま市(浦和区)・越谷市を中心に診療を行う
森田動物医療センター
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