2025/01/06
愛犬が最近なんだか「元気がない」、「散歩に行きたがらない」と感じたことはありませんか?また、食事量は変わらないのに体重が増えてきた、毛並みが悪くなってきたといった変化に気づくこともあるかもしれません。
これらの症状は「年齢のせい」と見過ごされがちですが、実は病気が隠れている可能性もあります。その一つが「甲状腺機能低下症」です。
今回は犬の甲状腺機能低下症について、症状や原因、治療方法などを解説します。
■目次
1.甲状腺機能低下症とは?
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症は、甲状腺という首元にある小さな臓器から分泌されるホルモンが不足することで起こる病気です。甲状腺は、体の代謝を活発にする重要なホルモンを作り出しています。このホルモンが十分に分泌されなくなると、体全体の代謝が低下し、さまざまな症状が現れます。この病気は、4〜10歳に見られることが多いです。
また、甲状腺機能低下症を引き起こしやすい好発犬種としては以下が挙げられます。
・マルチーズ
・ビーグル
・コッカー・スパニエル
・シェットランド・シープドッグ
・ボーダー・コリー
・シベリアン・ハスキー
・ゴールデン・レトリバー
症状
犬が甲状腺機能低下症を引き起こしたら、以下の症状が見られます。
・元気がなく、無気力になる
・食事量は変わらないのに体重が増える
・顔がむくむ
・毛が薄くなる(特に胴体や尾の先)
・皮膚病が治りづらい
・表情が悲しげに見える
・震えやふらつき
これらの症状は、年齢のせいと見落とされることが多いため注意が必要です。
原因
甲状腺機能低下症と診断された犬のうち、90%以上は「原発性甲状腺機能低下症」が原因とされています。このタイプは、主に以下の2つの要因によって引き起こされます。
<甲状腺炎>
免疫細胞が誤って甲状腺を攻撃し、炎症や破壊を引き起こす状態です。多くの場合は遺伝的要因が関与していると考えられています。
<萎縮>
原因は不明ですが、正常な甲状腺組織が脂肪組織などに置き換わることで機能が低下します。甲状腺炎の進行によるものともされています。
ほかにも、稀に先天的な甲状腺機能低下症、甲状腺の癌、下垂体(甲状腺を刺激する臓器)の病気など、が原因となる場合もあります。
診断方法
犬の甲状腺機能低下症の診断では、主に血液検査が用いられます。具体的には、以下のような結果が病気の兆候となります。
・甲状腺ホルモンの総サイロキシン(T4)や遊離T4の低下
・下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンTSHの増加
また、甲状腺の萎縮を確認するために超音波検査やCT検査が行われることもあります。
治療方法
甲状腺機能低下症と診断された場合、不足している甲状腺ホルモンを補うためにホルモン製剤を服用します。しかし、甲状腺の機能を元に戻すことは難しいため、この治療は基本的に生涯続ける必要があります。
また、定期的に血液検査を行い、ホルモンのバランスを確認しながら、適切な薬の量を調整していきます。
予防法やご家庭での注意点
残念ながら、甲状腺機能低下症を予防する方法がありません。前述したとおり、甲状腺機能低下症は高齢だから仕方がないと症状を見落とされることが多い病気です。そのため、愛犬がなんとなく元気がない、散歩に行きたがらない、昔より太ってきたなどといった様子が見られる場合は動物病院を受診することをお勧めします。
また、毛が薄くなった、皮膚病が治らない、毛並みが悪いなど皮膚に変化が見られることもあるため、日頃から愛犬の様子を観察することが大切です。
ほかにも、健康診断を定期的に受けることで病気の早期発見につながります。気になる症状があれば、獣医師に相談しましょう。
まとめ
犬は自分の体調を言葉で伝えることができないため、病気に気づくのが遅くなり進行してしまうこともあります。そのため、飼い主様が小さな変化を見逃さずに気づくことが大切です。
また、甲状腺機能低下症は治療をすれば症状を抑えることができる病気です。「年齢のせい」と思わず、愛犬に元気がないと感じたら、病気が隠れている可能性を考えて動物病院に相談しましょう。
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森田動物医療センター
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