2025/02/04
最近、犬や猫が「年を取ってきたと感じる」「歩き方がぎこちない」「元気がない」といった変化に気付いたことはありませんか?犬や猫は医学の進歩や飼育環境の改善により寿命が延びています。その一方で、加齢に伴う体の変化や病気が起こりやすくなります。一般的に、犬では7歳以上、猫では11歳以上がシニア期とされ、老犬や老猫としてのケアが必要になる時期です。
シニア期に入った犬や猫は、体力や認知機能、視力などにさまざまな変化が現れます。これらの変化に早期に気付き、適切な対応を行うことで、健康を維持しながら快適な生活を送ることができます。
今回は老犬や老猫に多く見られる症状や病気、そして日常生活でのケアのポイントについて詳しく解説します。
■目次
1.よく見られる老犬・老猫の症状
2.目の健康にも影響が?
3.早期発見のポイント
4.白内障の治療可能な段階について
5.日常生活でのケアポイント
6.まとめ
よく見られる老犬・老猫の症状
<運動機能の変化>
高齢になると、筋肉量が減少し、運動能力が低下していきます。散歩や遊びを嫌がる、ジャンプが苦手になるといった変化が見られることが多く、活動量が全体的に減少します。特に散歩を嫌がる場合は、筋力の衰えだけでなく関節の問題や痛みが隠れている可能性があります。
<関節の痛みと歩行困難>
老犬や老猫では、「関節炎」が非常によく見られる病気の一つです。関節炎は一度発症すると完治が難しく、痛みや炎症の緩和を目的とした治療が必要になります。具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
・立ち上がりに時間がかかる、または立ち上がりを嫌がる
・足を触られることを嫌がる
・びっこを引く
・活動性が低下し、元気がなくなる
これらの症状が見られた場合、早めに動物病院で診察を受けることをお勧めします。症状を放置すると、痛みがさらに悪化し、生活の質(QOL)が大きく低下する可能性があります。
<認知機能の問題>
人間の認知症に似た症状が現れることがあります。例えば、夜中に吠えたり鳴いたりする夜鳴きや、昼夜逆転の生活になることがあります。また、トイレを失敗するようになったり、今までしなかった場所で粗相をしたりすることもあります。これらは「認知機能不全症候群」と呼ばれる加齢性の問題に起因する場合が多いです。
認知機能の衰えが見られる場合は、まず動物病院で診断を受け、適切な治療法や生活環境の改善を行うことが大切です。
目の健康にも影響が?
老犬や老猫では、目のトラブルも加齢による変化の一つとして現れやすくなります。犬や猫の目の健康を守るためには、日々の観察と早期発見が重要です。
老犬や老猫に多く見られる目の病気には、以下のようなものが挙げられます。
<核硬化症>
加齢による自然な変化で、水晶体が白く濁って見えます。ただし、視力には影響がなく、治療の必要もありません。
<白内障>
核硬化症と似ていますが白内障は病気の一種で、進行すると視力低下や失明を引き起こします。さらに、放置すると緑内障や網膜剥離といった合併症を引き起こす可能性もあります。白内障は進行性の病気であり、早期発見と治療が非常に重要です。
<目ヤニの増加>
グルーミングやまばたきの頻度が減ることで、目ヤニがたまりやすくなります。この場合は、清潔なタオルやガーゼで優しく拭いてあげましょう。
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<甲状腺機能亢進症>
特に老猫に多い病気で、瞳孔が常に開いた状態になる特徴があります。もし愛猫の瞳孔がいつも開いている場合は、早めに動物病院で診察を受けることをお勧めします。
早期発見のポイント
犬や猫の目の病気は、飼い主様の日々の観察が早期発見の鍵となります。また、定期的に動物病院で健康診断を受けることで、症状が進行する前に適切な治療を開始することができます。特に犬の散歩時には障害物や草むらに気を付け、目を傷つけないよう注意しましょう。
白内障の治療可能な段階について
白内障は進行具合によって、以下の4つの段階に分けられます。
初発期:水晶体の10~15%が濁っている状態
未熟期:水晶体の15%以上が濁っている状態
成熟期:水晶体全体が濁り、視力がほぼ失われた状態
過熟期:水晶体のたんぱく質が液化し始めた状態
初発期や未熟期では、点眼薬やサプリメントで進行を遅らせることが可能です。しかし、成熟期や過熟期では外科手術が必要となり、治療の難易度も高くなります。放置すると失明や感染症のリスクが高まるため、早めの治療が重要です。
日常生活でのケアポイント
老犬や老猫の健康を維持するには、以下のような日常的なケアが欠かせません。
<適度な運動>
無理のない範囲での散歩やストレッチは、体力の維持や脳の老化予防に役立ちます。特に関節炎の予防には、軽い運動を取り入れることが効果的です。
<体重管理>
肥満は関節に負担をかけ、さらなる健康問題を引き起こす原因となります。定期的に体重を測定し、適切な食事管理を行いましょう。
<痛みの管理>
関節炎などの痛みがある場合、当院では「ソレンシア(猫用)」「リブレラ(犬用)」という新しい治療薬を提供しています。ソレンシアとリブレラは炎症を抑え、痛みを軽減する効果があり、皮下注射で投与するため飼い主様の負担が少ないのが特徴です。
<住環境の改善>
老犬や老猫が過ごしやすい環境を整えることも重要です。滑りやすいフローリングには滑り止めを敷き、寒さ対策や段差の解消を行いましょう。
まとめ
老犬や老猫が健康に長生きするためには、飼い主様が日々のケアを丁寧に行い、早期発見と早期治療を心がけることが大切です。定期的な健康診断を受けることで、加齢に伴う病気やトラブルを未然に防ぐことができます。愛犬や愛猫の体や心の変化に寄り添い、シニア期を快適に過ごせるようにサポートしていきましょう。
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